『道東の旅Ⅲ』-釧路湿原展望台遊歩道-
こんにちは、ご訪問頂きありがとうございます。
今回は、「釧路湿原展望台遊歩道(くしろししつげんてんぼうだいゆうほどう)」を紹介します。
(訪問日:2019年(令和元年)9月下旬)
前回では、史跡北斗遺跡展示館から釧路湿原展望台に着き、「ヤチボウズ」をモチーフに造られたという展望台の館内を一通り見学した時の様子を紹介しました。
↑ その名の通り「湿原展望台遊歩道」へいざなうかのような広場なのでしょうか? 遊歩道の入口付近にある「いざない広場」です
展望台から出て北側にある近くの「いざない広場」へ行ってみました。
そこで案内板を見ると、広場の端にある入口から遊歩道へ入り、「サテライト展望台」までは1.1㎞のコース(バリアフリーの木道なので車いすでも行けます)、遊歩道を1周(アップダウンのある木の階段を通ったり吊り橋を渡ったりしてグルリと回ってくる)し南側の出口までは約2.5㎞のコースがあることが分かりました。
「1周しても2.5㎞なら私の短い足で歩いてもそんなに時間はかからずに回ってこられるだろう」と思いましたので、ぐるりと1周回って来ることにしました。
さっそく広場から歩き始め遊歩道へと入って行きましたが、案内板によるとサテライト展望台までの間には「はばたき広場」と「あおさぎ広場」の二つの広場があります。
遊歩道の所々に釧路湿原に関することや生息する動植物などについての簡単な解説が書かれた「説明板」が設置されてありました。
『 特別天然記念物「タンチョウ」 (説明板より)
タンチョウは古来から瑞鳥(めでたい鳥)と呼ばれ、アイヌの人々からはサルルン・カムイ(湿原の神様)と呼ばれ尊ばれてきました。全町1.4m、翼を広げると2.4mほどの日本最大の鳥です。
明治時代の終わり頃には、すでに絶滅したと考えられていましたが、釧路湿原で大正13年に十数羽のタンチョウが発見されました。昭和10年に釧路湿原の一部が「釧路丹頂鶴繁殖地」として国の天然記念物、昭和27年には特別天然記念物に指定され、保護が図られています。 』
はばたき広場には、「特別天然記念物『タンチョウ』」、「湿原の主『イトウ』」、「湿原のはたらき」の説明板がありました。
『 湿原の主「イトウ」 (説明板より)
イトウはサケの仲間で、体長2mにもなる日本最大の淡水魚です。かつては本州の東北地方にも生息していましたが、現在では北海道のみに分布しています。
イトウは成長に応じて食性が変り、体長15cmくらいまでは水生昆虫を餌とし、これより大きくなると主に魚を食べます。また、大型のものはカエルやネズミなども捕食します。
成長は遅く5年で30~40cm、8年で50~60cmほどしか成長しません。春(4月)に産卵し、産卵後も生き続け15~20年以上生きるものもいます。近年は数が減っており、「幻の魚」とも言われています。 』
『 湿原のはたらき (説明板より)
●主な機能●
貯水、洪水の防止
湿原はスポンジのように水を溜め、一度に溢れ出ることを防ぎます。ダムのような機能を持つことから、自然がが育んだ「水面の見えないダム」とも言われています。
地域気候の緩和・安定
湿原が多くの水を溜め込むことで、温まりにくく冷めにくいという水の性質から急激な地域の気候の変化を和らげるはたらきがあります。
温暖化ガスの吸収
広大な面積に生育する湿原の植物は、多くの二酸化炭素を吸収し、植物の体内に固定します。植物が枯れたあとも泥炭層として蓄積します。
生物多様性の保全
ヨシ・スゲ湿原、ミズゴケ湿原、湖沼、河川など自然環境に富み、多彩な動植物を育む場所となります。
水質の浄化
湿原に流れ込む水の中に含まれている土砂や栄養分(リンや窒素)などの吸収する天然フィルターとしてのはたらきがあります。
レクリエーションの場
人々に自然の豊かさを感じさせ、安らぎを与えます。カヌーやキャンプなどの野外活動の場や花や野鳥観察の場として楽しむことができます。
環境教育・調査研究の場
湿原景観や湿原に生息する多くの動植物などにより、環境教育や調査研究の場を提供してくれます。 』
↑ あおさぎ広場への途中にもちょっとした展望台がありました。
はばたき広場を後にして、あおさぎ広場へ向かいました。
釧路湿原遊歩道やその周辺について書かれた案内板を見ると、「あおさぎ広場」から先にも道があり「温根内ビジターセンター」に行くことができる「釧路湿原探勝歩道」(旧鶴居軌道跡)へつながっているとのことでした。
↑ あおさぎ広場へ着きました
『 釧路湿原探勝歩道(旧鶴居軌道跡) (説明板より)
鶴居村の温根内地区から釧路市北斗地区を経由し、釧路市北園地区まで、釧路湿原に軌道跡が残っています。この鶴居軌道跡は、昭和4年、現在の釧路市から鶴居村へ開拓資材などを運ぶために運行が始まった馬ひきトロッコ鉄道です。
当初は荷物専用でしたが、その後旅客専用の「客トロ」も運行されるようになり、昭和17年には木炭自動車が導入されました。その後、丘陵地に道路整備が進むにつれ、バスなどの他の交通機関にその役目を譲り、昭和43年には全面廃止となりました。
現在は、釧路湿原展望台から温根内ビジターセンターや釧路湿原道路まで、湿原探勝歩道として整備され、手軽に散策が楽しめます。 』
『 ヤチボウズ (説明板より)
ヤチボウズ(谷地坊主)は湿地を好むスゲ類が作り出した根の固まりで、その形が坊主頭のような形をしていることから付けられた名です。このような形になるのは、枯れたスゲの上に新しいスゲが育つためです。スゲは秋には枯れてしまいますが、年間を通して低温な気候であるため、スゲの葉や根が分解されず、その上に新たなスゲ類が育ち、枯れるという作用を繰り返しながら徐々に高くなっていきます。さらに、土壌が凍結して隆起する寒冷地特有の凍上現象によって、スゲの根を押し上げるため坊主頭のような形になっていくと言われています。そして何十年もかけて春先の雪解け水や雨水が湿原に流れ込んで根本周辺の土を流失させるため、根元は細くなっていき、人の頭のような形になります。ヤチボウズの中心部分は虫のすみかになっています。アリ、クモ、ムカデ、甲虫類も住んでおり、時にはサンショウウオがもぐり込んで越冬したりすることもあります。 』
『 鶴居軌道敷跡 (説明板より)
釧路市湿原展望台の遊歩道から湿原へ下ると温根内木道につながる鶴居軌道敷跡があります。この道は昭和4年頃に釧路市~鶴居村間を結ぶ「殖民軌道雪幌線」として運行された馬ひきトロッコ列車の軌道敷跡です。昭和43年に廃線となり、現在は釧路湿原探勝路(北海道自然歩道)として活用されています。 』
↑ サテライト展望台へ着きました
※ 以下の動画には風切音や機械音などの雑音が入っていますので、視聴に際しては音量にご注意ください。
↑ サテライト展望台の横にさらにもう少し高い展望台が設置されてありました
※ 以下の動画には風切音や機械音などの雑音が入っていますので、視聴に際しては音量にご注意ください。
↑ 据付望遠鏡の横に置かれた表示盤を見ると、この展望台からは何と「摩周岳」や「斜里岳」も見えることが示されてありました。そこで、私は目を凝らして遠くの山々を探してみたら「多分あれが摩周岳…?」発見しました!
『 天然記念物「釧路湿原」 (説明板より)
昭和10年8月に釧路湿原の一部2,700haが「釧路丹頂鶴繁殖地」として国の天然記念物に指定されました。
昭和27年3月には、「釧路のタンチョウ及びその繁殖地」として面積が2,749haに拡大され、特別天然記念物となりました。その後、昭和42年6月にタンチョウそのものが特別天然記念物(生息地に関係なく)に指定され、同年7月に面積を5,012haに拡大し、湿原そのものが「釧路湿原」として天然記念物に指定されました。 』
『 ラムサール条約登録湿地 (説明板より)
正式名称/特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約
ラムサール条約は、国際的に重要な湿地を国際協力を通じて保全することを目的とし、水鳥の生息地としてだけではなく、湿地そのものが持つ機能・資源・価値を将来にわたり維持していこうとする条約です。
釧路湿原は昭和55年にラムサール条約の日本国内第1号の登録湿地として登録されました。当初は、昭和55年当時の鳥獣保護区部分の5,012haが登録されましたが、その後、平成元年7月に7,726ha、平成11年1月に7,863haへと登録面積が拡大されています。 』
『 釧路湿原国立公園 (説明板より)
「釧路湿原国立公園」は、昭和62年7月、国内28番目の国立公園として誕生しました。
広大な湿原部分とその湿原東部に位置する海跡湖や周辺丘陵部を含む26,861haが国立公園区域となっています。 』
『 ヤチボウズ (説明板より)
カブスゲなどのスゲ類が、前年までの根から毎年、地下茎をのばし、数十年で40~50cmの株を作ると言われています。大きな株の形状は、トックリを逆さにしたような形になっています。
①スゲが根をはる ②スゲが株をつくりはじめる ③土壌の凍結で隆起する
④スゲが株を生長させる ⑤地面が収縮し、根もとの土壌が雪解け水などで流される ⑥株の生長をくりかえし、土壌がさらにえぐりとられる 』
『 ヤチマナコ (説明板より)
湿原には、無数の小さな流れや水が湧き出してできた小さな池(池沼)が点在しています。これらの池沼はスゲ類などの湿原の植物によって埋められていきますが、その途中でまだ埋まりきっていない水面がのぞいているところがあります。
地元の人々はそのような池沼を「ヤチマナコ」"湿原の瞳"と呼んでいます。ヤチマナコの岸はせり出して、植物が水面に浮いた状態です。湿原に見える水面の直径よりも底の方がつぼ型に広くなっていて、言わば、湿原の落とし穴です。 』
※ 以下の動画には風切音や機械音などの雑音が入っていますので、視聴に際しては音量にご注意ください。
「湿原のブラックホール」や「馬殺し」ともいわれる「ヤチマナコ」は、湿原に棲む動物たちの棲みかにも利用されているようですが、不用意に湿原の中に足を踏み入れる(一般人が勝手に入ることは禁止されているとは思いますが)と大変なことになるかもしれません。
※ ウィキペディア・フリー百科事典「釧路湿原探勝路」、『国土交通省北海道開発局釧路開発建設部釧路市ホームページ・サイト「釧路湿原展望台」』、『釧路湿原国立公園連絡協議会サイト「釧路市湿原展望台の遊歩道」』を参考にさせて頂きました。
ご訪問頂きありがとうございました。
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